April 17, 2009

沢木耕太郎『世界は「使われなかった人生」であふれてる

世界は「使われなかった人生」であふれてる世界は「使われなかった人生」であふれてる
著者:沢木 耕太郎
販売元:暮しの手帖社
発売日:2001-11
おすすめ度:4.5
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このタイトルを一端目にすれば思わず手に取らずにはいられないはずだ。
「使われなかった人生」とはなんだろう、と。

題名と同じ最初の章にはこんな一節がある。
だが、というより、だからこそ、もしこちらの道ではなく、あちらの道を選んでいたらどうなっていただろう、あちらにはこちらと違うどういう人生があったのだろうかと、時に人は、後悔するというのではなくぼんやりと考えることがあるような気がする。それが「ありえたかもしれない人生」への夢なのだ。(12)”

「ありえたかもしれない人生」という言葉は
「使われなかった人生」とは違うと彼は言っている。
どう違うのか。それはこの章を読んでもらえればわかることで、
ただ本当はわからなくてもいいものかもしれないとも思う。
何せこの本は雑誌連載されていた沢木耕太郎による映画評をまとめたものであり、
そこまでタイトルを引き摺り読み通す必要がないのだから。
けれど、やはりこの本には、
いや映画には「使われなかった人生」があるように思えてくる。
そしてそこに自分の何かを重ねてしまう。
かつてあったものやかつてありえたものや。


単純に映画評としてものこの本は魅力的だと思う。
約30作品ほど紹介されていて、
そう思うのは多分私が学生時代にそのほとんどをビデオで見ていたことから、
読んでいるうちに自然とあの映画漬けの日々を思い出したからかもしれない。
月に20本以上、1日5本見るような日もあったあの頃。
ビデオ屋をはしごして探した作品。
作品そのものよりも強くそうした映画の日々を思い出させてくれる。
忘れていた映画を思い出させてくれる。
懐かしく思いながらこの一冊を読むも、
これから見たい映画を探すにもお勧めの一冊。


2008年10月


vespertide at 00:00│Comments(0)TrackBack(0)  

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