October 14, 2013

こうの史代 『夕凪の街 桜の国』 全1巻



しあわせと思うたび
美しいと思うたび
愛しかった都市のすべてを
人のすべてを思い出し
すべて失った日に
引きずり戻される
おまえの住む世界は
ここではないと
誰かの声がする
(P25より)
美しい作品だと思った。
一方でその清潔さに隠れない原爆が残した残酷な傷跡が、
戦争を知らない世代の僕に戦争が持つ時間では消えない重さを、
そこから生み出る人の感情を恐怖させる。
それでも美しいと感じた。
それはなぜかというとまぁ、ありていに言ってしまえば人間讃歌なのだろうなと思う。

半世紀以上経った今でも戦争の話が消えていくことはないけれど、
戦争経験者の数は次第に減ってきているから、
直接的な記憶の存在は薄れていくように感じる。
だから今度は記録と感情とで作られた戦争という過去の出来事を
今から未来に向けてどう導いていくのか、それを考えなければいけない。

戦争だけではなく、世界だけでなく、自分自身の過去についても、だろう。

少し、今更な感じでこの作品を読んだ。


夕凪の街 桜の国 [DVD]
田中麗奈
東北新社
2008-03-28


原作との違いは微々たるものなので概ね流れは同じだった。
最後のシーンは、映画特有のシメみたいなものだろう。

原作を読んで感動したらそれで十分かな。


vespertide at 18:00│Comments(0)TrackBack(0)  | 映像

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